初の育休取得も!
水産業者がBカートでDXを実現

株式会社豊洲漁商産直市場
代表取締役
長野 泰昌 様

株式会社豊洲漁商産直市場様の導入事例

鮮魚卸が「次世代のためのDX」に挑戦した理由

DXに取り組むきっかけを教えてください

きっかけは親会社の資本業務提携により、オイシックス・ラ・大地株式会社(東証プライム)の連結子会社になったことです。
もともとオンプレミスの基幹システムに脆弱性があり、次世代へのバトンを渡すためにもDXが必要だと感じました。

ECの必要性もあり、オイシックスの連結子会社だったカラビナテクノロジーさんにシステム開発を依頼したという流れです。

Bカートを選んだ理由はなんですか

本当はすべてのシステムをゼロから作りたかったのですが、コストが高く断念しました。

そこで、カラビナテクノロジーさんに相談したところ、操作が簡単かつセキュリティ面で実績のある「kintone」と、BtoB ECプラットフォームとして機能面や予算・カスタマイズ性で私たちの希望に合致する「Bカート」をご提案いただいたんです。

最終的には、ゼロから構築すると数千万円かかるところを、半分ほどの費用に抑えることができました。

水産業ならではの商習慣やルールに対応

Bカート導入以前の業務体制や当時の課題について教えてください

以前は、毎日15時から24時30分まで、スタッフが常駐して電話やFAXでの注文を受け、手動でシステムに入力していました。プロの飲食店や市場の取引先がお客様となるため、担当者には水産業に関する専門的な知識が求められます。しかし、今現在は大丈夫であったとしても、将来的にはそのスキルを持つ人材が不足する可能性も感じていました。

また、夜間や閑散期などの所謂「ヒマ」と言われるタイミングの体制も課題でしたね。繁忙期にはかなりの電話注文が殺到する一方で、曜日や時間帯によっては1時間に2~3本しか電話が来ないこともあります。それでも、受電待機のために専門知識を持つスタッフが常駐する必要がありました。

さらに、電話受注の場合は「電話回線の本数までしか同時に注文を受け付けられない」というのも課題としてありました。電話が3台あったとして、その受話器が全て上がっている間は4件目以降の電話は不通です。そうなると、取りこぼしてしまう注文も多いんですよね。
せっかくトヨイチから仕入れようと思ってくださったのに、注文が出来ないんじゃ元も子もありません。今現在の受注状況を考えると、当時それで逃していた注文はかなり多いんじゃないかと思います。

新たなシステム構築はどのような流れで進めましたか

大まかな流れとして、最初の3か月間はカラビナテクノロジーさんと共同で徹底的に要件整理を行いましたね。その後、要件に基づいて半年ほどかけてシステムを作ってもらいました。もちろんその期間も微調整の繰り返しです。そして、一部のお客様にご協力いただき出来上がったシステムのテストを実施しました。その際にいただいたフィードバックを基に更に1か月間修正を重ね、ついに正式稼働となりました。

システム構築を進めている間は、毎週オンラインミーティングを実施し、カラビナテクノロジーの担当者さんには何度も豊洲市場に実際に足を運んでいただきました。あちらは魚のことがわからない、こちらはシステムのことがわからないという状況だったので、最初から「お互い隠さずに本音で進めましょう」と、腹を割って話し合うことを大事にしました。

水産業には独特の商習慣やルールが多く存在し、それらをシステムに反映するのはかなり大変でした。例えば、魚は1尾単位で注文を受けますが、出荷時には重さで請求するなど、細かい処理が必要です。また、実際に市場で仕入れを行うスタッフも使いやすいように、現場での反応を見ながらUIやデザインを改善していきました。

はじめての育休取得も実現、新システムによる業務効率化

導入後、利用者の反応はいかがでしたか

予想通り、最初は「電話じゃないと面倒だ」という声も多かったです(笑)。とはいえ、こちらとしてもそれで折れる訳にはいかないので、1週間で「これなら使える」と思ってもらうことを目標に、お客様の元へ直接足を運んで丁寧な説明を行いました。その際にいただくフィードバックはきちんと受け止め、同時進行でデザインやUIを考えながらサイトの改善を重ねていきました。当時を振り返るとかなりキツかったのは事実ですが、その結果2週目には順調に稼働し、今では8割がECサイト経由の注文です。

これまでは、ピークタイムでも4人・4回線までしか注文を受けられず回線がパンクしてしまうこともありました。ですが、Bカート導入によって、電話・FAXだけでは対応できなかったであろう量の注文にも対応できるようになり、注文の時間帯も広がりました。また、スマホで簡単に発注できるようになったことで、客単価も1.2倍、売上全体も1.5倍に増えています。

Bカート導入による業務の効率化についてはいかがですか

情報の共有が圧倒的にスムーズになったと感じています。仕入れを行う際に市場内でどこに誰がいるのか、どの商品がどうなっているのか等を、iPadを用いて常にリアルタイムで把握できるようになりました。そのおかげで情報の伝達漏れがなくなり、ヒューマンエラーが激減しました。

また、以前は現場で紙に記録していた仕入れ情報の写真を事務所に送り、事務所のメンバーが手打ちで反映を行っていましたが、今ではiPadから仕入れ情報を入力するだけで事務所に即座に共有できます。他にも様々な面で効率化を体感していますが、一番インパクトが大きいのは、やっぱり当社ではじめて社員が育児休暇を取得することができたことですかね。以前の水産業界では考えられなかったことですし、今回のDXの大きな成果のひとつだと思います。

今後の展開

また、水産業の仕事は過酷ですが、業界全体がDXを進めることで、賃金水準を引き上げ、さらに多くの人に水産業界で働く魅力を伝えられるようにしたいです。そうなれば、美味しい魚がもっと多くの消費者に届くようになります。

私たちが開発したこのシステムは大きな財産です。自社だけでクローズドにするよりも、業界全体で共有し、皆で業界を盛り上げていくことで、もっと面白い世の中になると信じています。

株式会社豊洲漁商産直市場

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