【2022年度版】BtoB-EC市場規模|EC化率は35.6%に成長@経済産業省
経済産業省の調査によると2018年のBtoB EC市場は340兆円を超え、毎年拡大傾向にあります。「総取引額」に占める「ECでの取引額」で示されるEC化率も徐々に高くなってきています。このように市場や取引環境が変化するなかで、BtoB ECを検討する企業は今後も増える傾向にあると予測されます。
ECによるビジネス商取引は、従来の電話やFAXによる受注・取引形態から大きく進化するイメージが強いため、BtoB ECを積極的に取り入れたいとする企業もあるでしょう。そこで、BtoB ECの理解を深めながら、導入までのステップについて考えてみましょう。
BtoB ECを開始するにあたって
導入する際に大切なことは、目的・目標をしっかりと定めることです。基本的な事項から見ていきます。
改めてBtoB ECの必要性を認識する
自宅のパソコンや手元のスマートフォンで、好きなときに商品が買えるインターネット通販。その取引規模が急成長していることは、皆さんもご存知かと思います。
実は、これは企業間の商取引にも当てはまります。
よく知らない方も多いかもしれませんが、企業間における商材の取引でもECを使った取引が増えています。その取引規模が、楽天やAmazon、ネットスーパーなどの取引額の合算を超えることも確実視されています。それだけ企業間での電子商取引「BtoB EC」が活発に行われているということです。これは、これまでの受発注手段であった「電話」、「FAX」、「対面営業」が、大きくデジタルにシフトしていることを物語っています。
BtoB ECの導入を全社共通認識化する
とはいえ、多くの企業が「電話」や「FAX」、ルートを巡回する「対面営業」による商習慣に慣れてしまっているかもしれません。現時点で問題なく稼働している仕組みに手を加えるのは、勇気のいることです。
しかし、市場の成長度を見れば、多くの企業がBtoBでECを活用するようになっているのは事実です。「BtoB ECの必要性」や「導入した場合の効果」、「競合がEC化した際の脅威」などについて、いちど全社で検討しておく必要がありそうです。特に経営層の理解が必要であり、前向きに検討する場合や導入時は、トップダウンによる指示が強く求められます。
<一緒に見ておきたい記事>BtoB ECにおける導入前・導入後の注意点
BtoB EC構築の準備
それでは次のステップとして、「BtoB ECにはどのような選択肢があるのか?」を考えてみたいと思います。
BtoB ECの構築方法を知る
BtoB ECは、大きく分けて次の4つの方法で調達することができます。
- クラウド(SaaS)
サーバーなどのインフラだけでなく、Webからアクセスできるインターフェースがすでに用意されている方法です。そのため、独自の要件に沿った個別の開発ができない場合が多いものの、汎用性の高い機能が揃っています。SaaSの特長である調達までの「スピード感」、利用料だけで済む「コスト優位性」を持ちあわせており、立ち上げまでに独自のシステム設計や開発の手間、費用がかからないのが特長です。その業務に適するように、日々、改善・強化がされていくため、ビジネスの実情にあった最新の機能を使うことができます。システム環境はサービス業者から提供を受ける形になるので、基本的なメンテナンスは不要です。 - パッケージEC+カスタマイズ
自社のシステムを中心に、市販されているパッケージソフトウェアタイプのECを購入し、自社の目的や必要な仕様にカスタマイズする方法です。パッケージを利用することで、ゼロから企画したり構築したりする労力、時間を削減できます。ただし、「パッケージソフトが自社の目的に合うか?」を検証しなければなりません。カスタマイズ費用やメンテナンス費用も求められます。 - オープンソース
カスタマイズできる範囲が広く、有料のパッケージ機能(アドオン)の追加が比較的簡単にでき、完全オリジナルの機能も実装できる特徴があります。その一方で、これらのメリットを活かすには社内やパートナー企業といった一定の開発リソースが必要となります。導入や運用にあたって、セキュリティ対策なども自社で管理することになる点に注意が必要です。 - フルスクラッチ
すべてのシステムをゼロから構築する方法です。自社の商取状況の把握・分析から始まり、それに合わせてシステムを設計し、構築中にもテストをくり返し、最終的な完成の後も不具合などのチェックを行います。コストやメンテナンスに手間がかかりますが、自社の状況に特化したシステムを構築できるというのがメリットがあります。
BtoB EC導入の目的と目標を決定
このようにBtoB ECの構築方法はいくつかありますが、まずは導入の目的を明確にし、社内や取引先へ周知したうえでスタートすることが大切です。さらに、BtoB ECを導入することで営業やサービス体制がどのように変わり、どのような効果を得られるのか、などをシミュレーションしておく必要もあります。
BtoB ECの要件を定義する
目的と目標を決めた後は、それを実現するためにBtoB ECの要件を明確にしましょう。
例えば、構築や運用の段階でSaaSが要件に合っているか確認することで、自社に最適な構築やBtoB ECの運用を実現することができます。
また、新たなサービスやシステムを導入する際、本当に必要なもの以外も目がいき予算オーバーや導入後に活用しきれないというケースに陥らないようにするためにも、要件を明確にすることは重要といえます。
導入の際に必要な業務とは
ここでは、BtoB ECの導入目的や目標、そして構築方法に関わらず、ECサイトの立ち上げにおいて必ず求められるタスクや人員について紹介していきます。
- マスタデータ登録
顧客や商品の基礎情報(マスタデータ)を導入するサービスのデータベースへ登録します。商品情報であれば、いわゆる”ささげ業務”が必要になります。 - サイトデザイン、制作
ECサイトのページデザインを行います。社内のリソースが足りない場合は外部の制作会社に相談する方法があります。ECサイトのソフトウェアベンダーに紹介してもらうのもよいでしょう。 - 運用フローの構築
受注~出荷~代金回収までの流れを、現場の作業ベースでフローチャートを作成します。この段階で現場の要件整理や、社内システムなどとのデータ連携を行う箇所を確認していきます。 - マーケティング
ECサイトへ掲載する商材の計画や、他の販売チャネルとの役割整理、集客施策の企画などを行います。
既にCRMやMAなどのマーケティングツールを導入している場合はデータ連携の内容や方法を検討しましょう。 - 物流
EC以外の取引と商材が共通している場合、在庫を一元管理する方法を検討します。一元管理が難しい場合は、EC事業として在庫を個別管理するところから始める方法もあります。「3.運用フローの構築」と併せて進めるとよいでしょう。
【EC運営で必要になるメンバー】
- EC事業のマネジャー
下記の各担当者の業務進捗管理や企画に対する意思決定を行うことが主な役割です。最低でも1名配置されるのが望ましいでしょう。 - 日々の受注業務、問い合わせ対応担当
受注した内容を確認し、出荷担当へ回します。問い合わせの対応が不足しそうであれば、FAQページの作成やチャットボットの導入を検討しましょう。2名以上配置されるのが望ましいですが、導入初期で受注が少ない段階では1名から始めてもよいでしょう。 - マーケティング担当
事業の方針によっては新規顧客に限らず既存の取引先についてECサイトへ誘導する施策も企画します。、リソースに余裕があればPR担当、Web解析、サイト改善担当、SNS担当など役割分担をしていくとよいでしょう。 - サイトデザイン、制作担当
ECサイトのページデザインを行います。HTMLやCSSといった専門的な知識が求められるため、社内に最適な担当者が見つからない場合、新たに採用するか外部の制作会社をパートナーとして探すことも検討しましょう。 - 出荷業務担当
特にEC以外とECの取引で出荷業務フローが異なる場合、担当者を明確にしておきましょう。また、ECによって受注をデータで扱えるようになることで外部の物流業者への委託が容易になる場合がありますので併せて検討してみましょう。
まとめ:目標設定と全社共有がポイント
BtoBの事業を営む企業にとって受発注の仕組みは業務の大きな部分を占めるものです。そのため、ECによって新たな業務フローを構築する際には最初の目的と目標設定が肝心です。さらにEC事業を実行するにあたっては社内の各担当者の協力が不可欠となるので、設定した目的と目標を関係者全員に共有しておくことを忘れないようにしましょう。
参考: