【2022年度版】BtoB-EC市場規模|EC化率は35.6%に成長@経済産業省
BtoB ECの導入には、「業務の効率化を図りたい」、「新規顧客を獲得したい」、「事業の成長スピードを上げたい」などの目的があると思います。これらをBtoB ECの導入で実現できるのか、メリットとデメリットの観点から考えてみます。
企業間取引のEC化が当たり前の時代に
Amazonや楽天に代表される消費者向けのECサイトは、スマートフォンからでも簡単に注文できます。実店舗を持つスーパーもECサイトによる販売に期待を寄せています。それと歩調を合わせるかのように、企業間取引でも、ECによる取引が急速に進みつつあります。
電話、FAX、EメールがECに
企業間取引では、注文を取ってまわる対面のルート営業、電話/FAX、あるいはEメールに注文書を添付したものの送受信がまだまだ多いのです。それらの大半がECに置き換わるとすると、「B to C EC」の市場規模よりかなり大きな市場になるという見方がされています。それだけ大きな規模の取引が企業間では行われており、その営業や電話、FAXにより費やされる手間(コスト)も、それだけ大きいと見ることもできるのです。
ライバル企業ではなく、社内の課題と向き合う
BtoB ECに取り組むということは、業務の改革や効率化につながり、営業マンの訪問や営業車両に費やされるコストや、電話代、FAX用紙代などの直接的な経費を減らす効果だけではなく、それらの管理に当たるバックヤードの対応コストも削減できると期待できるのです。費用を抑えて事業を拡大するという位置づけで取り組めるチャンスといえます。。ライバルが導入するから……といった対抗意識のような受動的なきっかけで物事を進めてしまう前に、一度社内を見渡してみることで業務の課題が見えてくるはずです。
BtoB EC導入によるメリット、業務改革・効率化のスキームに
いつもの仕事の進め方に問題がない場合、「変更すると、かえってミスの機会が増える」などの理由を背景に、なかなか業務改革には取り組めないものです。しかし、BtoB ECの導入がその機会をつくります。
メリット1:業務の無駄を洗い出せる
ECを導入する際に、既存の受発注のフローや処理の仕方を見直すことになります。電話で受けて伝票を起こし、それを関連する部署にまわすような方法から、Webを介して直接受注システムにデータとして品目と数量が書き込まれることになります。従来のフローとは大きく異なる部分もあるので、業務の見直し・再構築をするのは当然に求められることとなります。そこで、これまで気づいていたもので未着手だった業務の改善を進めるいいきっかけになります。
例えば、起票類がなくなることで、無駄な押印工程をなくすことや人によって差が出ていた作業時間を標準化することできます。また、受注の基本的なフローと処理はWeb上で行われることになるので、クレジットカード決済の導入や自社システムとのAPI連携なども考えられるでしょう。
結果として、属人化しているような業務を、初見でも理解しやすくなり、学習コストを抑えることで人材採用のハードルも下がります。
メリット2:業務全体の最適化に着手できる
「既存の業務をなるべく残したECの導入」ではなく、「既存の業務をいかに削減・効率化・発展化」できるかを目標にEC化し、販売に付帯するコストをどこまで削減できるかが重要になります。受注という入口だけがデータ化されるのではなく、これまで紙で処理していた受発注の情報伝達を、すべてWeb上で行い、その記録や管理もWeb上で行うことになります。
また、ECの導入による社内処理の工程や時間の短縮化とあわせて、「商品の発送」などのスピードアップまでを視野に入れた効率化に着手することが大切です。その点では、パートナーの倉庫や物流の会社も含めた、全体の最適化を目指したものにならなければなりません。その結果として、商品の在庫や顧客もデータで管理できる機会が増えることになります。
デメリット1:想定される課題
改革には労力が必要です。「BtoB EC」の導入でも、業務の見直しのほか、社内調整や取引先からの理解を得る活動など、これまでと違った新しい仕事がしばらくは増えます。そこをうまく乗り切るには、まずは社内コンセンサスを得ておくことです。責任者や組織を明確にして権限を与え、関連部署との調整をスムーズに行えるようにし、経営層などのトップの理解を得て、EC化の旗振り役になってもらうなどが必要です。
また、何よりも心配なのが導入に関わるコストでしょう。システムの調達方法について、自社での構築やパッケージソフトウェアの購入など、準備・立ち上げに時間や費用がかさむ方法を最初に思い浮かべてしまうのがその原因かもしれません。ですが、クラウドで利用できるBtoB専用のECシステムを利用すれば、構築費などが不要で、使った分だけの利用料の支払いで済みます。コストを抑えた導入も可能となっているのです。
さて、自社のシステムはそれで立ち上がったとします。次に課題となるのが、既存の顧客です。電話一本のほうが楽、定期的に訪問してくれたほうが助かる、何かのついでに立ち寄ってくれればそのときに注文する、などの理由で、ECへの移行に必ずしもすぐに対応してくれない顧客もいます。
その点では、利用者側から見たECサイトの操作性は重要であり、顧客向けの操作マニュアルを整備し、提供することも大切な活動のひとつです。問い合わせ専用の窓口があればなおよいでしょう。
いずれにせよ、BtoB ECサイトを立ち上げるのと同時に、その後の課題についてもシミュレーションし、事前に準備しておくことで、ECへの移行がより確実で短期に実現できることになります。
BtoB EC導入によるメリット、顧客深耕、事業拡大の手段に
顧客との信頼関係をより深くし、新規顧客の開拓や事業領域の拡大こそが、BtoB EC導入の最重要テーマです。
既存顧客には、より価値の高いサービスを提供できる
注文などのルーチン業務がEC化され、一部が自動化、データ化されることで、これまで当たり前だった日々の業務の多くを省力化できます。それで得られる新しい時間で、顧客のニーズにじっくりと耳を傾けることができるようになります。提案の機会を増やし、顧客満足度を高めることにつながるのです。
そして実際の運用では、ECの利便性が顧客側にも大きなメリットとなります。注文の手間だったカタログでの型番の確認、電話やFAXでの発注など、労力と人為的なミスが減るという効果が期待できます。
新規事業のツールとして活用、商圏や商材を拡大
ECによる受発注管理の利点は、「いつ、誰が、何を買ったか」を、これまでの管理よりもいっそうわかりやすく、そして応用範囲を広く持てることです。次の需要を予測してメールを送る、電話をかけるなど、相手方の継続発注を待つよりも一歩進んだ営業活動になり、受注をより確実化できることになります。さらに、以下のような事業拡大の方策を視野にいれることができます。
- ネット広告で新規の顧客を獲得
これまでの訪問や電話営業に加え、Webサイト上の集客と、印刷費や郵送費がかからないEメールによる販促活動などで、広い顧客にアプローチできる。 - 卸や小売りに任せていた販売をメーカーから直販
代理店に多くを任せていた販売に加え、自社の直販ルートを得ることができる。訪問営業スタッフがいなくても、とりあえずECサイト上からの販売ができる。 - 補完関係にある商材を、本業の商材に合わせてセットで販売
部品の製造会社が、部品とともに工具(仕入れ品)を一緒に販売することなどが可能。 - 商圏の拡大、本業の商材以外の商品販売
近隣地域だけでなく、全国への販路の拡大や、新規事業における商材の最初の販売方法・チャネルとして利用できる。
新規・既存問わず、スムーズな取引を実現可能
ECのイメージとして、すべての顧客に同じ金額で商品が見えると思われがちかもしれません。ですが、BtoB ECでは、顧客ごとに提示する金額を変えたり、見せる商品を変えたりすることが可能になります。そのため、取引の大きい顧客には先んじて新商品を案内したり、初めて取引する顧客には既存顧客と違う価格で提示したり、状況に応じた対応をスムーズに行なうことができるのです。
また、商品や金額と同様に、決済方法も顧客ごとに変えることができます。例えば、小ロットだが購入頻度が高い顧客にはクレジットカード決済を可能にする、ロットが大きい顧客には従来の決済方法のみ可能にする、といった形でコントロールすることができます。
つまり、BtoB ECを導入することで、顧客に応じてスムーズな取引を実現することができるといえます。営業に問い合わせる手間が省けるため、顧客の満足度向上という側面でも効果的です。
まとめ:BtoB ECで会社やビジネスが変わる
競合と差別化するためだけではなく、「業務改革」や「新規事業の拡大」を積極的に行うことを第一義として、計画的な導入を図ることが、BtoB ECを何倍にも活用できることになるのです。その結果、これまでとは違うビジネス展開ができるようになると言えるのです。
参考: