【2022年度版】BtoB-EC市場規模|EC化率は35.6%に成長@経済産業省
顧客満足度の向上が購買の継続や拡大、他社への流出の防止につながることは、皆さんご存じかと思います。ECの活用においては、顧客の声に耳をかたむけ、メールやSNSなどで継続的な関係づくりを行い、最適なタイミングと内容で情報提供を行うことが顧客満足度向上における一般的な方策として挙げられます。そして施策を行う従業員の満足度も重要な指標です。BtoB ECであれば顧客の購買体験の改善だけではなく、新規営業先の拡大や受注事務コストの削減、そして従業員の満足度向上にもつなげることができます。
顧客満足度の重要性
改めて顧客満足度について考えてみましょう。
顧客満足度を向上させる方法とメリット
まず、「顧客満足度」とは何をもってその尺度とするかですが、公益財団法人 日本生産性本部・サービス産業生産性協議会では「顧客期待」、「知覚品質」、「知覚価値」、「顧客満足」、「推奨意向」、「ロイヤルティ」の6つの指標を示しています。アンケート調査などでは、これらを5段階評価や10段階評価で点数化して把握するのが一般的です。
点数による評価以外にも、顧客満足度の向上によるメリットは目に見えて表れます。その一例としては、リピートオーダーが増える、購入対象が関連商材へ拡大する、友人に紹介する、ライバルが現れても乗り換えない、などが挙げられます。つまり、顧客満足度の向上は「安定した売上」を約束することになります。
顧客満足度を向上させる方法
では、顧客満足度を向上させるにはどうすればよいのでしょうか? その方法は大きく分けて、次のように示すことができます。
顧客と継続的な関係を維持する
「製品・サービス」(Product)、「価格」(Price)、「売場や提供方法」(Place)、「広告」(Promotion)といった4つの「P」に分けて施策を検討していきます。それぞれに対して顧客には固有の「期待」があり、それに応えることのみならず、それ以上のものを提供することで顧客の満足度は向上していきます。近年は、商品の差別化が難しく、価格競争が限界に近い状況になっています。これらの満足度を無理して獲得するよりも、24時間の購入受付、豊富な品揃えのなかから選択できるなど、3番目の「売場や提供方法」をインターネットで実現する手法が有望視されるようになりました。また4番目の「広告」においても、電子メールでの通知、レコメンド機能による顧客のニーズに合ったタイムリーな情報提供などが、インターネットならではの販促手段として定着しています。これら2つの「P」による満足度の確保が、顧客との優良な関係の維持につながります。
従業員の満足度を向上させる
商品やサービスを提供するのは自社の従業員であるため、従業員のモチベーションや顧客対応が顧客満足度にも影響を与えます。煩雑な業務に追われていると、顧客への対応意識が薄らぎます。よって、従業員がコア業務に集中できる環境が大切です。単調な業務はもちろん、時間や労力を求められるバックヤードの負荷をなるべく減らすことで、顧客対応への集中度が高まり、顧客満足度の向上へとつながります。
この2つの側面において、顧客や従業員の「期待」を上回るものを提供し、「期待 < 満足度」を実現することが大切です。時代の変化とともに製品やサービスの形は変わってきていますが、この2要素が顧客満足度を向上させるために重要であることは今後も変わりありません。
CX(カスタマーエクスペリエンス)の重要性とBtoB事業
「カスタマーエクスペリエス」(CX)は「顧客体験」と訳され、「顧客経験価値」や「顧客体験価値」という意味合いで使われる顧客と深い関係を築くための新しいマーケティング・コンセプトです。
カスタマーエクスペリエンス(CX)と顧客満足度
CXは、購入プロセスにおいて顧客が接触したすべての体験を、顧客の視点で総合的に評価する考え方です。商品の性能だけでなく、購入までの過程や購入後のアフターフォローも含まれます。「顧客満足度」というと、機能面やサービス面など、一面的な見方で論じてしまうケースが多いといえますが、もっと視野を広くして、「スタッフの感じが良かった」など、情緒的な面も含めた「総合的な体験」による評価を重視していることになります。
なぜCXが求められるのか、その強みは?
商品で差別化するのが難しい現代では、顧客の体験による差別化がより重要になってきました。それらを強化することでライバルに打ち勝つ、という考え方です。例えば、「おもてなし」などの情緒的なコミュニケーションをはじめ、ECサイトのレコメンド機能、顧客のニーズや状況に合わせた商品や情報の提供、深夜でも購入できる24時間受付、迅速な配送システムなどが顧客体験として重視され、差別化の手段となっているのです。
顧客満足度の向上とコスト削減・営業開拓を同時に実現するBtoB EC
企業間取引においても、優れたCXの提供は顧客満足度を高め、ロイヤルティの高い顧客になってもらうことが可能です。そのひとつの方法が「BtoB EC」による顧客利便性の向上です。
顧客側のメリット
「顧客体験」というと、消費者をイメージしがちですが、BtoBにおいてもCXは当てはまります。例えば、次のような要素はECを活用した企業間の商取引によって顧客側にメリットを提供します。
- 部厚いカタログから商品を選び、電話やFAXする手間の省略
- 24時間見積り依頼、発注が可能
- 口頭で伝えることで生じるミスの削減
- 自社向けの商品リスト、価格、決済方法などのパーソナライゼーション
- 配送までの事務処理におけるタイムラグの削減
- 購買履歴データによる発注記録の管理と参照機能
これらの機能や特徴は、発注業務とそれに関連する作業や事務処理の省力化に貢献します。購買体験の改善は、顧客満足度の向上につながり、その結果、リピートオーダーの確保、関連商品の購入、同業他社への流出を防ぐなどの効果が期待できます。
販売者のメリット
BtoB ECの導入効果は、顧客にメリットを提供するだけではありません。商材を販売する企業側にも、次のような導入メリットをもたらします。
- 24時間の自動受付
- 購買履歴の管理
- 紙の書類の削減
- 受注から経理処理、商品手配、発送などの迅速化(配送までの社内処理時間の短縮)
- これらによる顧客満足度の向上、事務処理コストの削減
- ネットを使ったマーケティング活動により、新規顧客を全国に拡大
つまり、BtoB ECの導入は、受注業務の効率化、迅速化を実現するツールとなるわけです。
従業員満足度を向上させ、モチベーションアップにも期待
この結果、事務処理や各種管理業務の負担、ルーチンワークの比重が減り、コア業務に集中できる環境を構築できます。新規顧客の開拓や商材の開発など、新しい領域へチャレンジする機会が得られるため、結果として、従業員の満足度向上やモチベーションアップにつながります。
まとめ:顧客と自社の利便性を同時に向上させる、それがBtoB EC
顧客の利便性を向上させ、顧客満足度を高めながら、導入する自社にとってもバックヤード業務の効率化や、従業員のコア業務への集中度向上によるモチベーションアップなど、顧客と自社の双方にプラス効果が大きいのが「BtoB EC」です。
参考:
用語解説「CX(カスタマー・エクスペリエンス)」|野村総合研究所