【2022年度版】BtoB-EC市場規模|EC化率は35.6%に成長@経済産業省
商品を扱う会社では、受注から在庫の確認、発注手配などの作業があり、それと並行して伝票類が社内を巡ります。発注が完了すれば、その記録として伝票の整理や保管といった業務が生じます。商品点数の拡大とともに、これらバックヤード業務の規模は増大していきます。顧客ごとに納品仕様や決済方法が異なれば、さらに煩雑化・肥大化していきます。ここでは、バックヤード業務の課題を解決する方法をご紹介します。
バックヤード業務の課題は社内の広範囲に及ぶ
発注を受けたときに「受注伝票や発送指示書を書くのは当たり前」という認識では、バックヤード業務の課題に対処できないどころか、その認識すら芽生えないかもしれません。まずは、バックヤード業務について再考してみましょう。
バックヤード業務を仕分けしてみる
そもそも、バックヤード業務とは何を指すのでしょうか。Biz Drive(東日本電信電話株式会社)のWebサイトによると、「企業において顧客やクライアントなどの外部と直接的には関わらない管理や事務業務などを行う部署や業務のことを意味する」(バックオフィスと同義語)、さらに「バックヤードは直接的に外部と関わり、収益を上げるメイン事業の部門ではないため、部門全体の効率化を図り、余分な経費を削減すべき部門でもある」と説明されています。
企業向けに機材を販売するBtoBビジネスでは、電話やFAXによる商品の購入受付(受注)から始まり、伝票の起票、関連部署への伝達、在庫と納期の確認、顧客への返信、発送手配(同梱する納品書の作成)、売上登録、発送記録、入金確認に至るまで、すべてがバックヤード業務に位置付けられます。
会社の屋台骨ともいえる業務であり、関連する部署、関わっている従業員の数、交換される書類の数は相当な規模になると想像できます。それらすべてが「収益を上げるメイン事業の部門ではないため、部門全体の効率化を図り、余分な経費を削減すべき部門でもある」となるわけです。
もし、この中にひとつでもボトルネックがあると、業務全体の流れが滞ってしまいます。例えば、電話の回線数やスタッフの数といった問題により、受注が増える時期に電話がつながりづらくなる、などがボトルネックに該当します。
バックヤード業務の課題
原材料費や外注費などは数字として目に見えるため、増えれば「抑制しなければ」という意識が生じます。一方、バックヤード業務の経費は数値として捉えにくく、また事業の主要な部分を裏から支えている部門でもあるため、コストとして意識するのが難しいと思われます。しかし、コストが発生する以上、削減できたほうがよいのは事実であり、その削減効果は企業利益として還元されることになります。
また、もうひとつの課題として、「バックヤード業務は常に増加する方向にある」ということが挙げられます。商品点数が増えたり、顧客ごとに仕様を変えたりすると、バックヤード業務も増え、煩雑さが増していきます。その結果、複雑な業務を処理できるスタッフが限られてしまう「属人化」や、スタッフのモチベーションの低下を招くことになるでしょう。情報の収集や共有にも悪影響を及ぼし、最終的には企業の意思決定のスピードを鈍らせることにもつながります。
バックヤード業務の課題・改善手法
会社の歴史とともに、そのまま積みあがってしまったような業務フローは、見直せば改善できる点がたくさんあります。いちど、バックヤード業務の「棚卸し」をしてみるのもひとつの方法です。そしてやはり、改革の手法として筆頭に挙げられるのは業務のデジタル化です。
業務の棚卸し
もっとも簡単な方法は、以下の項目に分けて内容を整理することです。
- 部署名
- 業務名
- 業務内容
- 担当スタッフ数
- 稼働時間・工数
- 発生頻度
- 課題
業務が一覧化されると、業務全体を俯瞰することができ、弱点や解決すべき課題が見えてきます。まずは、不要な業務を削減、簡素化させる方向で改善を進め、別の業務と一体化させたり、流れを入れ替えたりするなどを検討し、全体の業務フローを最適化していきます。
業務のデジタル化
業務フローの見直しとともに、伝票の処理や顧客の管理方法、基幹業務との連携などをデジタル化するのも、バックヤード業務のスリム化・効率化に効果的です。情報伝達のスピードがあがるのみならず、データの動きから業務を可視化できたり、データの二次利用として販促へ応用できたりします。例えば、顧客データは「請求処理」のほかに、「いつ、誰が、何を、どれだけ買ったか」という購買データにもなります。これを次回の販促や、さらに進めて新規事業の立案などに役立てられます。
バックヤード業務の改善手法「BtoB EC」の導入効果
受注業務という「入口」を「BtoB EC」でデジタル化することで、そこを起点にして業務の見直し、データによるデジタル管理を進める方法もあります。
「BtoB EC」導入のメリット
電話やFAXで受注した場合は、受注伝票を作成するための入力作業が必要になります。さらに、「入力内容に間違いがないか?」を確認し、伝票をプリントアウトして控えを保管し、本紙を関連部署に送らなければなりません。その後、在庫と配送時間を確認し、必要に応じて発注者に電話やメールなどでフィードバックします。このとき、「電話の聞き取りミス」や「伝票の記入間違い」などが発覚すると、客先に無駄な作業を強いることになります。そのほか、在庫の管理ミスにより、納期の遅れを顧客に伝えなければならないケースもあるでしょう。
では、受注の窓口を「BtoB EC」に置きかえるとどうなるでしょうか?
まず、発注する顧客側は、Webサイト上で自社が必要とする製品の型番・価格などのほか、在庫数、配送の目安などをひと目で把握できるようになります。その結果、発注する側のストレスは小さくなります。必要な数を入力するだけで見積書を確認できますし、24時間、好きなタイミングで注文できるため、タイムロスや注文のし忘れがなくなります。
一方、受注側ではどうでしょうか。注文された情報は、そのまま営業、経理、倉庫、配送などの各部署に伝わります。事務スタッフが仲介する必要がなくなるため、この間に発生しがちなミスや遅滞などを減らすこともできます。その結果、受注業務の労力のみならず、各種伝票や台帳類の作成、決済、保管などの労力、紙類の削減も実現できるのです。発注の手間が簡便になったことで顧客の満足度が向上するだけでなく、受注側の作業も減ることで、従業員の満足度向上、ひいてはモチベーションの高まりも期待できます。
さらに、BtoB ECでの受注はインターネットを使用するため、その窓口を全国規模に展開できます。ネット上でのマーケティング活動を進めれば、新規顧客を広く集めることも可能となります。
バックヤード業務の課題解決とほかの部署や業務への波及効果
これまで、BtoB ECの特徴について述べてきましたが、バックヤード業務の「どの部分の課題解決につながり」、さらに「どのような部署・業務に波及効果が期待できるか」をあらためて整理しておきましょう。
- 受注における電話/FAX、メモからの起票、などの作業が不要
- 受注管理の記録作業の低減
- 顧客ごとの決済管理などを自動化でき、経理業務の負担低減
- 経理部門の月次の請求業務をクレジットカードや掛売り代行サービスによって簡素化
- リアルタイムの受注把握と在庫等の連動で、倉庫や購買業務の効率化
- 購買履歴のデータ化により、マーケティング部門での利用拡大
- ルート営業を最小化できるため、営業スタッフの新規活動への注力度が向上
- 購買データの分析による新商材の開発や経営企画への活用
受注業務のバックヤードに限らず、経理などの管理部門、営業活動、さまざまな情報をもとに意識決定を行う経営企画の仕事にまで、そのプラス効果が期待できることをご理解いただけると思います。
まとめ:バックヤード業務のコスト削減は、企業全体の利益向上に貢献する
バックヤード業務の棚卸しとともに、「BtoB EC」により受注窓口をデジタル化すると、それを起点に関連する社内業務の多くを効率化、簡素化できるようになります。その余力を新規営業や新事業の開拓にあてることで、売上と利益の機会拡大につなげることができます。
参考: