【2022年度版】BtoB-EC市場規模|EC化率は35.6%に成長@経済産業省
対企業(BtoB)のビジネスでは、扱う商品の専門性や複雑さ、顧客企業の業種や取引ルールの違いなどから、販売は「対面による直接取引」や「信頼できる代理店経由」が一番であるという考え方は根強いと思います。一方で、「販売の全国展開や顧客対象の拡大を図りたいが、自社の営業担当者や代理店のリソースでは難しい」という課題を持つ企業も少なくありません。自社の営業担当者や、代理店以外の多様な販売チャネルの活用法についてご紹介します。
チャネル戦略とは?
チャネル戦略は、マーケティングの4P分析の一つである「Place」に該当します。まずは、ビジネスにおける位置づけ、重要性について見てみましょう。
4つのPとチャネル
マーケティングにおける4つのPとは、Product(商品)、Price(価格)、Place(流通、チャネル)、Promotion(プロモーション)を意味しています。この4つがミックスし、それぞれが効果的な戦略となることで、マーケティング活動の成果が最大化されることを意味します。
これらのうち「Place」がチャネル戦略になります。競合と比べて、商品の品質が良く、価格的に優位であっても、「チャネル戦略」に不足・不備があると、その良さ・優位性が顧客に伝わることなく終わってしまうことになります。
チャネルの区分
チャネルと聞くと、多くの人は販売店や自社の直販ルートなどの「販売チャネル」を連想すると思います。しかし、「マーケティング情報の発信」や「顧客情報の取得」が広範囲かつ多肢にわたるようになった現代では、それらはチャネルの一部でしかありません。チャネルは大きく分けて、次の3つに分類できます。
- 流通チャネル
商品が工場や倉庫から顧客のもとへ運ばれていく経路とその方法を指します。トラックでの配送、宅配便による個別配達、店舗への供給など、物理的な流れを意味することが多いです。 - 販売チャネル
顧客に対する販売の場所や機会を意味します。店舗やEC(Webサイト)をはじめ、企業間取引においては営業担当が行う商談も該当します。 - コミュニケーションチャネル
顧客に情報を届ける経路や方法を指します。テレビやラジオのCMをはじめ、DMや電子メール、チラシ、ポスター、企業のWebサイト、SNSからの情報提供が該当します。
販売チャネルの種類と特徴
顧客との接触機会となる「販売チャネル」について、もう少し具体的に見ていきましょう。
販売チャネルの種類
販売チャネルについて考えるうえでの一つのポイントは、顧客との接触機会を、いかに数多く、多肢にわたって持てるかです。その意味では、販売スタッフがいて、商品と代金がその場ですぐに交換される実店舗での販売のみが販売チャネルではない、と認識する必要があります。
コミュニケーションチャネルとして紹介した「自社のWebサイト」も、商品情報の提供とともにECサイトへの誘導経路があれば、販売チャネルとして機能します。ウェビナーで見込み客を集める行為も、後の販売につなげられれば、販売チャネルの一つと見ることができます。販売チャネルは、次のようなものが該当します。
- ウェビナー(オンラインセミナー)
いまではお馴染みとなったウェビナーやオンライン商談によって、申込フォームでの顧客情報取得、ウェビナー終了後のアンケートや、個別来場者の記録やアンケートによる感想の取得、名刺の交換、担当スタッフの丁寧な説明や質問への回答とその記録を活用することができます。一度の開催や出展で一定の顧客情報を獲得できること、普段は接点を持つことがない業種の方とつながる機会となることが特徴といえます。 - 電話営業・コールセンター
各種問い合わせへの応答、資料やカタログなどの請求者へのフォローアプローチ、その後の販売促進の電話やキャンペーンの告知などです。企業間取引(BtoB)においては一般的な手法ですが、インターネットでの情報収集が主流となった昨今では、後述のWebサイトやSNSの閲覧で何かしらの興味を持った方に対するアプローチを行う手法を取り入れる企業が増えているようです。 - オンライン商談
ウェビナーの参加者やWebサイトへの訪問者へ個別にアプローチし、顧客と個別にオンラインで商談を行う営業活動です。ZoomやGoogle Meetなどのツールでビデオ通話や画面共有機能を活用して顧客にヒアリングを行います。そのうえで商品紹介や見積提示、要望への対応をすることで、顧客の状況を踏まえた自社の提供価値を伝えることができる手法といえます。人対人のアプローチという点でウェビナーでは難しい顧客ごとの丁寧な対応が強みとなる方法です。 - 配送・設置・修理・保守などのサービス
設置時や修理時に新商品の情報を提供したり、その場での買い換えを提案したりする方法です。すでに何かしらの接点を持った顧客とのやりとりになるため、比較的話を聞いてもらいやすいケースが多いといえます。また、定期的に接点を持つ場合は、そこからあたらしいニーズを獲得することも可能です。 - ECサイト・Webサイト・SNS
商品情報やキャンペーンの告知から、申し込みや購入の受付画面へ誘導していくなど、幅広い対応が可能です。これまでは、Webサイトに商品紹介ページはあるものの、見積もり依頼などはメールや電話などで問い合わせなければいけませんでした。ですが最近は、企業間取引(BtoB)においてもECサイトで手軽に購入できるケースが増えています。Webで手軽に接点を持てるだけでなく、必要な時にそのまま発注を完了できるため、自社・顧客ともに使い勝手の良い手法といえるでしょう。
これらコミュニケーションチャネルに区分されるべきWebサイトやSNSは、情報の提供機会のみならず、販売機会の拡大にもつなげることができるという特徴があります。これが「現代的な販売チャネルのあり方」と見ることができるでしょう。
販売チャネルの活用にむけて
続いて、企業間取引も含めた販売チャネルの構築と、効果的な活用方法ついて考えてみたいと思います。
企業間取引(BtoB)における販売チャネルの捉え方
BtoBにおける販売チャネルとはどこに存在するのか思い浮かべてみましょう。企業が企業に対して販売する商品点数は膨大な数に昇ります。また、大口の商談となる大手や中堅クラス企業との取引をはじめ、町工場や商店など、全国に数多く存在する販売先に分かれます。チャネルは、それら広範囲にわたる、さまざまな種類、規模の購入担当者に利便を提供するものであり、販売チャネルの戦略はBtoBにおいても重要度は高いです。
つまり、チャネル戦略において大切なのは、顧客がどのような購買行動を取っているか理解し、その流れにあった販売チャネルを用意することといえます。
オムニチャネルの構築
オムニチャネルの実践について、現在BtoCにおいて既に積極的に行われていますので、まずはBtoCを例にオムニチャネルに行きついた歴史をたどっていきましょう。ひとつの販売主体としての企業が、自社のセールススタッフ、コールセンター、ECのWebサイト、販売店を持つことはすでに実施されています。これは「マルチチャネル」という販売チャネル上の区分けになります。さらに、在庫や顧客情報などを共有化したものが「クロスチャネル」です。そして、その販促方法は、テレビCMや新聞・雑誌の広告、メールによる告知など、複数のメディアを活用した「メディアミックス」にするのが当たり前になりました。
これで完璧なようですが、課題も残されています。例えば、商品を購入しに店舗へ出向いたのに、あいにく在庫が欠品していた場合、次の入荷を待つか、もしくは自宅に戻って同じ商品をインターネットで注文し、翌日以降の配送を待つしかありません。このような経験を多くの方がしていると思います。
そこで考案されたのが「オムニチャネル」です。実店舗でも、ECサイトでも、シームレスに購入できる環境を指します。先の例の場合、店舗になかった商品をその場でインターネット注文でき、商品の受け取りは店舗または自宅への配送、さらには提携しているコンビニエンスストアでも受け取れるような仕組みです。これにより顧客の利便性は向上し、必要とする情報や商品の接触・利用機会が拡大したことになります。BtoBの取引でも、店舗での購入、ルート営業に対する発注のほか、24時間発注できるBtoBのECサイトを用意し、どこからでも購入でき、配送先(納品先)を選べる体制は顧客の利便を向上させます。
ICT/インターネットの活用
オムニチャネルなど、販売チャネル戦略の強化・拡充にあたっては、顧客情報の共有、「商品情報の提供」と「販売機会」の両立化、そして店舗や営業スタッフによる対面取引のほかに、ECサイトの販売チャネルを持つことがそのポイントです。
顧客情報の共有
チャネルが多様化しているため、各チャネルで何らかの「購買につながる情報」を取得することが増えてきました。しかし、顧客情報を共有できていないと、せっかくの販売機会を逃してしまう可能性があります。
例えば、サービスセンターに旧モデルの修理を依頼してきた顧客がいたとします。もしも、その情報が買い換えを推奨すべき営業部に伝わらなければ、新モデルの販売機会を得られず、その顧客も新しい価値について知る機会を失ってしまうことになります。
このように、顧客の情報を各チャネルで共有することで、販売機会を高められます。
まとめ:チャネル戦略には顧客の行動を捉えて横断的に各チャネルを活用する
顧客の購買行動に合わせて販売チャネルを持つこと、それらで顧客情報を共有し、販売機会を逃さないようにすることの重要性について理解いただけたと思います。購買行動は変化するものです。また、ビジネスの展開が速くなっているので、必要なときに必要な量を迅速に求める動きも強まってきました。BtoBのビジネスでもオムニチャネル式の販売チャネルを用意しておけば、顧客の種類が変わるような新しい分野の新規開拓などにも有効です。BtoBのECも、それら販売チャネル戦略上の一つの選択肢として利用できるのです。
参考:
チャネルってどういう意味?|エン転職
BtoB企業こそ始めるべきコンテンツマーケティング|コンテンツマーケティングの教科書
【2019年版】BtoCマーケティングとBtoBマーケティングの違い|MAJIN MARKETING MAGAZINE
マーケティングチャネル戦略とは?種類や事例をわかりやすく紹介!|クラウドソーシングTIMES
【図解】オムニチャネルとは?クロスチャネルとの違い・代表的な事例|インテージ
企業間取引は生まれ変わる?新時代を迎えたBtoB ECとは!?|Bカート