卸売業のDXを徹底解説!課題解決の進め方から成功事例まで紹介

2025月12月2日
卸売業のDXを徹底解説!課題解決の進め方から成功事例まで紹介

多くの卸売業が、人手不足や旧来のアナログな業務プロセスといった課題に直面しています。これらの課題を解決し、変化の激しい時代を乗り越えるための鍵となるのが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。とはいえ、「何から始めれば良いのか分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。この記事では、卸売業がDXを推進するための具体的な手順やメリット、成功事例までを分かりやすく解説します。

卸売業が抱えるDX以前の共通課題

卸売業は日本のサプライチェーンを支える重要な役割を担っていますが、その多くがデジタル化の波に乗り遅れ、共通の課題を抱えています。DXを検討する前に、まずは自社がどのような課題を抱えているのかを正確に把握しましょう。

深刻化する人手不足と業務の属人化

少子高齢化の影響を受け、多くの卸売業で人手不足が深刻な問題となっています。とくに、長年の経験と勘に頼ってきたベテラン従業員が退職してしまい、そのノウハウが失われ業務が滞ってしまうという「属人化」のリスクが高まっています。特定の担当者しか業務内容を把握していない状況は、事業継続の大きな障壁となってしまいます。

参考:人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査.pptx

アナログな受発注業務による非効率

いまなお、電話やFAXによる受発注業務が主流となっている企業は少なくありません。しかし、アナログな受注方法では、聞き間違いや手入力によるミスを誘発しやすく、確認作業に多くの時間を費やしてしまいます。また、注文データが紙媒体で管理されているため、情報の共有や分析が困難になり、業務全体の効率低下につながってしまいます。

課題 具体例

発生する問題

アナログな受発注
  • 電話・FAXでの注文受付
  • 聞き間違いや読み間違い
  • 入力ミス
  • 確認作業の増加
紙媒体での管理
  • 注文書や伝票のファイリング
  • 情報共有の遅延
  • データ分析の不可
  • 紙媒体の保管コストが増加
  • 紙の破損・紛失のリスク
  • 保管場所の確保
手作業への依存
  • 伝票の転記
  • 在庫の手動更新
  • 人的ミスの発生
  • 業務の非効率化
  • 属人化しやすい

在庫管理の複雑化と過剰在庫のリスク

正確な在庫数をリアルタイムで把握できていないと、欠品による販売機会の損失や、過剰在庫による保管コストの増大といった問題が発生します。アナログな在庫管理では、需要予測が困難であり、適正な在庫レベルを維持することが難しくなってしまいます。

【関連記事】在庫管理をエクセルで始める方法!すぐに使えるテンプレートと作り方を解説 | Bカート ブログ

データ活用の遅れによる営業活動の停滞

多くの企業では、販売データや顧客データが各部署でバラバラに管理されており、有効に活用できていません。そのため、データに基づいた顧客分析や営業戦略の立案ができず、営業活動が個々の営業担当者の経験や勘に頼りがちです。その結果、組織としての成果を最大化することが難しくなってしまいます。

参考:Gartner、日本企業のデータ活用に関する最新の調査結果を発表:全社的に十分な成果を得ている組織の割合は8%

卸売業がDXを推進する3つのメリット

DXの推進は、前述した課題を解決し、企業に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。ここでは、卸売業がDXに取り組むことによって得られる主なメリットを3つ紹介します。

メリット1:業務効率化による生産性の飛躍的な向上

受発注業務や在庫管理、伝票作成といった定型業務をデジタルツールで自動化することで、作業時間を大幅に削減し、人的ミスを防ぐことができます。これにより、従業員はより付加価値の高い業務に集中できるようになり、企業全体の生産性が飛躍的に向上します。

【関連記事】受注業務の自動化を実現する方法とは?メリットと注意点を徹底解説 | Bカート ブログ

メリット2:新たな販路開拓と顧客満足度の向上

受注業務のDXの手段としてBtoB ECサイトを構築することで、これまで営業が届かなかった地域や顧客にもアプローチできるようになり、新規顧客を獲得する機会が生まれます。さらに、レコメンド機能を備えたサイトであれば、新規顧客の獲得による売上増加に加え、合わせ買い(クロスセル)やアップセルによって顧客単価が高まり、さらなる売上向上も期待できるでしょう。
さらに、注文を行う顧客側にもメリットがあります。24時間365日いつでも注文が可能になり、注文履歴の確認や在庫状況をリアルタイムで確認できるようになるため、利便性が高まるうえ、顧客満足度の向上にもつながります。

メリット3:データに基づく迅速で正確な経営判断ができる

これまで各部署に散在していた販売データや顧客データを一元管理し分析することで、売れ筋商品や顧客の購買傾向などを正確に把握できます。データという客観的な根拠に基づいた需要予測や在庫の最適化、経営戦略の立案が可能になり、迅速で的確な意思決定を実現することができるようになるのです。

卸売業のDXを推進する5つの手順

DXは、単にITツールを導入するだけで成功するものではありません。明確なビジョンを持ち、計画的に進めることが必要です。ここでは、卸売業がDXを成功させるための5つの具体的な手順について解説します。

手順1:DXの目的とビジョンを明確にする

まず初めに、「なぜDXを推進するのか」「DXによってどのような企業を目指すのか」という目的とビジョンを明確にすることが最も重要です。たとえば、「アナログな受発注業務を効率化して、残業時間を30%削減する」「データに基づいた営業活動で、新規顧客を20%増やす」など、具体的で測定可能な目標を設定しましょう。

手順2:解決すべき業務課題を洗い出す

次に、設定した目的を達成するために、現状の業務プロセスを詳細に分析し、どこに課題があるのかを洗い出しましょう。「受発注のミスが多い」「在庫管理に時間がかかりすぎている」など、現場の従業員の生の声も聞きながら、ボトルネックとなっている業務を特定します。

手順3:DXを推進するための体制を構築する

DXは全社的に取り組むべきプロジェクトです。経営層がリーダーシップを発揮し、各部署から担当者を選出して専門チームを組成することが成功の鍵となります。IT部門だけでなく、営業・経理・物流など、関連する全部署が連携できる体制を整え、会社全体で推進できる環境を構築しましょう。

手順4:課題解決に最適なITツールを選定する

洗い出した課題を解決するために、どのようなITツールが最適かを検討します。世の中には多種多様なツールが存在するため、自社の課題や規模、予算に合ったものを選びましょう。複数のツールを比較検討し、場合によっては専門家のアドバイスを求めることも有効です。

ツール分類 解決できる課題

導入効果

BtoB ECサイト
  • アナログな受発注業務
  • 業務の属人化
  • 販路の限定
  • 時間外の受注機会損失
  • 業務効率化
  • 業務品質の均一化
  • 事業継続リスクの低減
  • 新規顧客開拓
  • 顧客満足度向上
  • 24時間注文の受付が可能
WMS
  • 属人的な営業活動
  • 営業プロセスのブラックボックス化
  • データ活用の不足
  • 顧客情報の一元管理
  • 営業活動の標準化
  • データに基づく戦略立案
  • 教育コスト削減
CRM/SFA
  • 伝票の転記
  • 在庫の手動更新
  • 人的ミスの発生
  • 業務の非効率化
  • 属人化しやすい
RPA
  • 定型的な事務作業の繰り返し
  • 異なるシステム間のデータ転記作業
  • 人手不足の補完
  • 人的ミスの削減
  • 作業時間の短縮
  • 人件費の削減

手順5:スモールスタートで効果を検証し改善する

最初から大規模なシステムを導入するのではなく、まずは特定の部署や業務に限定してスモールスタートすることをお勧めします。導入後に効果を測定・検証し、課題が見つかれば改善していくというサイクルを繰り返すことで、失敗のリスクを最小限に抑えながら、着実にDXを推進することができます。

卸売業のDXで活用できる代表的なITツール

卸売業のDXを加速させるためには、ITツールの活用が欠かせません。ここでは、多くの卸売業で導入され、成果を上げている代表的なツールを4つ紹介します。

受発注業務を自動化する「BtoB ECサイト」

BtoB ECサイトは、企業間の受発注業務をオンライン上で行うためのシステムです。電話やFAXに代わってWeb上で24時間注文を受け付けられるため、受注処理の自動化や人的ミスの削減に大きく貢献します。また、取引先ごとに価格や表示商品の出し分けなど、卸売業特有の複雑な商慣習にも柔軟に対応することが可能です。

【関連記事】自社ECサイトとは?ECモールとの違いやメリット・デメリットを徹底解説 | Bカート ブログ

在庫を最適化する「倉庫管理システム(WMS)」

倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)は、倉庫内の在庫の入出庫管理や保管場所、数量などをリアルタイムで一元管理するシステムです。ハンディターミナルなどをもちいてバーコードで商品を管理することで、正確な在庫状況を瞬時に把握できるようになります。これにより、過剰在庫や欠品を防ぎ、在庫の最適化を実現します。

営業活動を支援する「CRM/SFA」

CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)は、顧客情報や商談の進捗、過去の取引履歴などを一元管理し、営業活動を効率化・可視化するためのツールです。これにより、担当者個人に依存していた営業プロセスの解消や、営業担当者間でのスムーズな情報共有を実現します。データに基づいた効果的なアプローチが可能になり、営業組織全体のパフォーマンス向上につながります。

定型業務を自動化する「RPA」

RPA(Robotic Process Automation)は、人間がパソコンで行う定型的な事務作業を、ソフトウェアのロボットが代行して自動化する技術です。たとえば、ECサイトからの注文データを基幹システムへ入力する作業や、請求書の発行・送付といった定型業務を自動化することで、従業員はより付加価値の高い業務に時間を充てられるようになります。

【企業別】卸売業のDX成功事例

実際に多くの企業がDXに取り組み、大きな成果を上げています。ここでは、卸売業におけるDXの成功事例を3つ紹介します。

株式会社丸冨士:製菓製パン材料卸業の大転換

1957年創業の製菓製パン原材料卸売業者で、長野・新潟を中心に全国4,000社と取引を展開しています。従来はFAXや電話中心の受注体制により受発注ミスが頻発し、属人的な業務が課題となっていました。この状況を打破する転機となったのが、3代目社長によるBtoB ECプラットフォーム「Bカート」の導入です。業務をデジタル化することで劇的な変革を実現しました。

導入後は受注量が1.5倍に増加したにもかかわらず毎月20時間の残業がゼロになり、受発注ミスも解消されました。さらに全国からの注文により会員数は4,000社まで拡大し、EC事業だけで年間3億円超の売上を達成。会社全体売上は10億円に達し、社員1人あたりの労働生産性が大手企業並みまで向上しています。

【関連記事】株式会社丸冨士 | お客様の声

株式会社豊洲漁商産直市場:水産業界の次世代DX実現

鮮魚卸売業を営む企業で、親会社のオイシックス・ラ・大地との資本業務提携をきっかけに本格的なDXに着手しました。従来は毎日15時から24時30分まで専門知識を持つスタッフが常駐して電話やFAXでの注文受付を行うという、属人的な業務体制が大きな課題でした。そこで、kintoneとBカートを組み合わせたシステムを構築し、水産業特有の商習慣に対応したデジタル化を実現しました。

導入後は8割の注文がECサイト経由となり、客単価が1.2倍、売上全体も1.5倍に増加しています。情報共有がリアルタイムで可能となったことでヒューマンエラーが大幅に減少し、同社として初となる社員の育児休暇取得も実現するなど、水産業界における働き方改革にも貢献しています。

【関連記事】株式会社豊洲漁商産直市場 | お客様の声

株式会社ダイキチ:フランチャイズ向け消耗品卸の革命的変化

1976年創業の清掃サービスフランチャイズ事業を展開する企業で、約1000名のフランチャイズオーナー向けに清掃用消耗品の卸売りを行っています。導入前はFAX受注やExcelの注文書によるメール受注が中心で、ヒューマンエラーや確認作業が頻発し業務効率に課題を抱えていました。こうした問題を解決するため、クラウド倉庫管理システム「ロジザードZERO」とBカートを同時導入することで、受注情報が自動で在庫管理システムに反映される仕組みを構築しました。

導入からわずか1ヶ月半で約650人のフランチャイズオーナーがシステム移行を完了し、1日あたり1〜2時間の工数削減を実現しています。商品コードの入力ミスによる誤出荷や二重アップロードなどのヒューマンエラーも解消され、業務改善どころか"革命"レベルの変化を達成しました。

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卸売業のDXを成功に導くためのポイント

DXプロジェクトを成功させるためには、ツールの導入だけでなく、組織全体の意識改革や取り組み方が重要になります。最後に、卸売業がDXを成功させるために押さえておくべき4つのポイントを解説します。

ポイント1:経営層が強いリーダーシップを発揮する

DXは、業務プロセスや組織のあり方を大きく変える改革です。そのため、経営層がDXの重要性を深く理解し、「会社をこう変えていく」という強い意志を持って、全社を牽引していくことが欠かせません。経営層のコミットメントがなければ、部署間の連携が進まず、プロジェクトが頓挫する原因となってしまいます。

ポイント2:現場の従業員を積極的に巻き込む

DXの推進において、実際にツールを利用するのは現場の従業員です。新しいツールの導入に対して、現場から抵抗感が示されることも少なくありません。計画の初期段階から現場の意見をヒアリングし、DXがもたらすメリットを丁寧に説明することで、従業員の理解と協力を得ることが重要です。

ポイント3:導入目的を明確にしてツールを選定する

「他社が導入しているから」「流行っているから」といった理由でツールを選定するのは失敗のもとです。重要なのは、自社が抱える課題を解決するという明確な目的意識を持ち、その目的に合致した機能を持つツールを慎重に選ぶ必要があります。ツールの多機能性に惑わされず、自社にとって本当に必要な機能を見極めましょう。

ポイント4:外部の専門家の知見を積極的に活用する

社内にITやDXに関する専門知識を持つ人材がいない場合、無理に内製化しようとせず、外部の専門家やコンサルティング会社の支援を仰ぐことも有効な選択肢です。専門家は豊富な知識と経験を持っているため、客観的な視点から自社に最適なDXの進め方を提案してくれます。

卸売業のDX推進に活用できる補助金

DXの推進には一定のコストがかかりますが、国や地方自治体が提供する補助金を活用することで、その負担を軽減することができます。ここでは代表的な補助金を3つ紹介します。

IT導入補助金

中小企業・小規模事業者がITツール(ソフトウェア、アプリ、サービス等)を導入する経費の一部を補助する制度です。業務効率化や売上アップにつながる様々なITツールが対象となります。

項目 内容
目的

中小企業の生産性向上を支援

対象経費

ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費など

補助率・上限額

申請枠により異なるが、最大で費用の4/5(小規模事業者の場合)、450万円(通常枠の場合)

参考:トップページ | IT導入補助金2025

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

革新的な製品・サービスの開発や生産プロセスの改善に必要な設備投資等を支援する補助金です。「ものづくり」という名称ですが、卸売業やサービス業も対象となります。

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の第21回公募を開始します | 中小企業庁

事業再構築補助金

中小企業が新分野への展開や業態転換、事業再編など、思い切った事業再構築に挑戦する際の経費を支援する補助金です。成長分野への進出やGX関連の取組、コロナの影響を受けた事業者の回復支援などが対象となります。

参考:トップページ | 事業再構築補助金

まとめ

本記事では、卸売業が抱える課題からDXのメリットや具体的な進め方、成功事例までを網羅的に解説しました。DXは単なるデジタル化ではなく、企業のビジネスモデルそのものを変革し、競争優位性を確立するための重要な経営戦略です。この記事を参考に、自社の未来に向けたDXの第一歩を踏み出してください。

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著者について
Bカート運営部
Bカート運営部 Bcart Operations Department

BtoBならBカート!で、おなじみのBカート運営部です。BtoB(企業間取引)のEC化を促進し社会にインパクト与えます。より良いサービスをご提供できるようスタッフ一同奮闘中!